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『聞き書き・抜き書き』について
ふだん気にとめないようなことでも、調べてみると思わぬ発見に出会うことがあります。Nature Netでは、取材や記事編集を通して出会った興味深い発見を、メンバーにお送りしているメールマガジンに『NNミニ知識』として、2001年からお届けしてきました。

『聞き書き・抜き書き』は、これらの発見をまとめて、コンテンツとして公開するものです。ここでご紹介する発見は、知識の「さわり」にすぎませんが、より深く知りたいという方のために、参考にした本、関連情報を掲載しているサイト、またWikipedediaへリンクをそれぞれの項目に入れました。

『聞き書き・抜き書き』記事をきっかけに、おもしろい知識の世界を広げていただければ幸いです。
 

“銀”というと、金と比べて価格も安いし、メダルなら2位だし、貴金属といってもちょっと地味な存在です。しかし、その歴史を調べてみると、銀の魅力は歴史を変えるほどの威力があったことがわかります。

銀は、光(可視光線)の反射率が金属の中で最大、つまり“ピカピカ”で、柔軟で、化学変化を起こしやすく、硫黄化合物に触れると、黒く変色します。また、バクテリアなどの殺菌作用も強い金属です。

このような特質を持つ銀は、古代から金とともに、人々の憧憬の的でした。紀元前3000年前のシュメール人の墓から銀の瓶が掘り出され、このころから人類が銀を使っていたことがわかっています。

銀はヒ素などの毒に触れると変化を起こします。ヨーロッパで、銀食器が支配階級や富裕層に好まれたのも、客人に食事に毒が含まれていないことを証明するためでした。
(*現代のヒ素は純度が高いので銀は変化しないそうです!)

15世紀、コロンブスが新大陸を発見、マゼランが世界一周を果たすと、植民地を求め、ヨーロッパ諸国はこぞって新大陸やアジアを目指します。

世界が結ばれたこの時代、地球規模の通商が大きく発展し、どこの国でも価値が認められる金や銀は、通貨としての役割を果たすようになります。とくに、埋蔵量が多い銀は、通貨として最適でした。

スペインが向かったアメリカ大陸は、大量の銀を埋蔵していました。スペインは、現在のグアテマラにあるポトシ銀山、メキシコのサカテカス銀山から大量の銀をヨーロッパに運びます。

銀はヨーロッパで、大きな社会変化を起こします。貨幣価値が下がり物価が高騰。商業が発展する一方で、地代に頼っていた旧領主が没落。農民は手工業に従事するようになり、やがて資本主義が発展します。

この時代、中国では明王朝が隆盛を極め、明の安定した社会を背景に、アジアでも商業が盛んになります。明でも通貨としての
銀の需要が高まり、明やアジアの交易で使われたのが日本の石見銀山から採掘された銀でした。

石見銀山の銀は、“ソーマ銀”と呼ばれ、明やアジア諸国の交易に使われただけでなく、ポルトガルや、17世紀になるとオランダの東インド会社との交易にも広く使われました。石見銀山が、世界遺産に選ばれたのも、こうした歴史的背景があってのことです。

お金を預けたり、借りたりする“銀行”は、1875年、日本で明治政府が米国の「国立銀行法」を訳した際、銀が金よりも通貨として流通していたため、中国語で、“店”を意味する“行”をつけて“銀行”としたとか。

そういえば、銀座は江戸時代の銀貨幣の鋳造所ですし、英語で「銀のさじをくわえて生まれる」といえば、お金持ちの家に生まれたという意味。

このように、かつての銀の地位は、いまでも残る言葉や名称からも理解できます。

こうして、20世紀初頭まで、銀は通貨として揺るぎない地位にありましたが、紙幣が通貨として導入されると、銀の価値は大きく下がります。

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以来、すっかり影が薄くなったように思える銀ですが、現代でも金属としての性質を生かし、私たちの生活を支える製品に数多く使われています。

早くから使われていたのはフイルムやレントゲンの感光剤。携帯電話、太陽光電池、プラズマディスプレイなど、近年普及した製品にも広く使われています。

さらに、抗菌作用を利用して、制汗剤や消臭剤にも使われ、「銀=Agイオン」の効果を謳ったコマーシャルを、最近よく見かけますよね。おかげで、銀の需要もこのところ伸びているのだとか。

ご存知のとおり、金、アルミ、鉄は、かなりの割合でリサイクルされています。ところが、銀のリサイクル率は、日本でも30%程度、つまり銀は、現在そのほとんどがリサイクルされず消費されてしまっているのです。採掘される銀だけでは、10年あまりで枯渇するとの試算もあります。

今、大量に銀が眠っているのは、工業製品やアクセサリー、食器など人間の生活空間です。今では地味な存在で、あまり意識することはありませんが、銀が有限であることを認識し、他の地下資源同様、銀もリサイクル率を上げていくことが必要なようです。


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